方正株式会社

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【対談】ハングリー精神から有能なIT人材が生まれる

20.06.05

#DX #対談

 

 

 

方正株式会社 代表取締役社長 管 祥紅

方正株式会社 代表取締役社長 管 祥紅

横浜市立大学 データサイエンス学部 准教授 小野陽子先生

横浜市立大学 データサイエンス学部 准教授 小野陽子

 

方正株式会社は、創業以来IT革命に積極的に参加し、社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)の大きな力になることを
ミッションとしています。

この4月に7名の新入社員を迎えた方正では、今後さらに新卒採用を重視する方針を決め、産学官の交流にも意欲的に推進してゆきます。
横浜市立大学は首都圏初のデータサイエンス学部を2018年に設置し、
膨大なデータの中から新たな社会的な価値を創造できる人材の育成を目指しています。

今回は、横浜市立大学 データサイエンス学部の小野陽子准教授と、方正の管祥紅社長が、
日本のIT人材教育や若い世代に望むことについて、ざっくばらんに意見交換をしました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモート対談を実現しました。

 

ハングリー精神が新たな発想の元になる

管:方正は北京大学が100%出資し、研究成果を産業化するために1996年設立されました。
中国では産学官の交流が盛んで、日本でも同じように大学と連携を取っていきたいと考えています。

 

小野:横浜市立大学のデータサイエンス学部では、文理融合を掲げています。文系だから、理系だからではなく、
何を勉強したいか、何をこの先やりたいという目的があって、そのために数学をやる、コンピューターをやるという学生が入ってきたことは嬉しいことです。

 

小野先生と対談する管_01

 

管:そういう学生をぜひ方正に紹介してほしいですね(笑)。日本は素晴らしいところで、人間も素晴らしいと思っています。
ただハングリー精神がない。

入社式ではスティーブ・ジョブズの言葉「Stay hungry. Stay foolish.」を伝えましたが、
日本の子どもは「Stay foolish」はほとんど実現しています。謙遜していて、非常に素晴らしい。
「Stay hungry」、ハングリー精神、物事をどんどん吸収するところは、不足を感じています。
会社でもたくさん課題があるのに、果敢に取り組んで自分の成長につなげていくとか、会社からいい環境を作ってもらって
成功するまでやりたいということはほとんどない。イノベーションプログラムを作って募っても、なかなか出てきません。

 

小野:新しい学部でやってみようという学生の中には、比較的そういうことをやってみたい学生が集まっています。
ただ、日本で2番目にできたデータサイエンス学部で、首都圏初の学部に入れたことで、
データサイエンティストとしてやっていけると思うのか、日本の中でお金を稼いでという感じで、
外に出ることまでは考えていない学生もいます。ハングリー精神でいうと、好奇心が少ないのかなと思います。

 

管:会社の中でも若い社員を厳しく叱ったりする上司はいるが、良くないと思っている。
若い人にもっと優しく、のびのびと自由な発想が出るように、どんな意見でも言わせてあげないと、成長しないと考えています。
私の北京大学の4年間では、どんな偉い先生でも学生は自分と平等だと言い、相手の意見を聞く、言わせてあげる環境でした。
その影響が大きいです。日本社会では子どもはみんな元気で、幼稚園は元気で、小学生はまだいい、高校生になると黙って、大学生は遊んで、
会社に入ってくると基礎から教えてもらって少しずつ仕事に慣れていくという感じ。

 

小野:自分の意見を言える環境でないと、興味ややりたい気持ちが萎えてきます。

 

管:そう。しかもITは新しい業界だから上司から教えてもらうことなんてありません。
若い人が自ら発想して世の中をどんどん変えていく。若い人が自由な発想でやっていってもらわないと、どんどん古くなってしまう。

 

小野:御社のような先進的な取り組みをしている会社に入りたいという方々は、ハングリー精神とか気概が違うのではと思いますが。

 

管:そういうことを重視しているし、比較的いいとは思います。
業務的にはチャンスを与えるし、ある程度学生たちにも伝わって、選択してもらえています。
新卒採用を重視する方針を最近決定したこともあって、価値観が合う人に来てもらって、活躍してもらうことで、
成功事例が増えていい循環になればと期待しています。

 

小野:データサイエンス学部では、データサイエンスセミナーを設けて、企業の方に90分、業界や企業でデータサイエンスをどういうふうに使っているかを話してもらっています。
3年生になるとインターンシップがあります。通常とは少し異なり、最初の課題発見から最後のアウトプットまで、2、3週間かけています。
社会とのつながりや、社会がどうなっているか全くわからないまま、大学の中だけでデータサイエンスの研究をやっていて、社会に出たときにとまどうことは避けたいので。

 

 小野先生_01

 

管:大学との連携には、研究開発の寄付依頼もあって、基本的に協力しています。協力することで、リクルートにもつながります。

 

小野:目的がないと人は動かない。何のために数学をやっているかわかっているのと、
目先のエクササイズだけをやっているのでは全然違うと思います。

 

最高なものは、必ず未熟なものから生まれる

管:武漢大学には印刷・包装系の学部があります。例えば、パッケージ制作ではかなり高度な画像処理をしないと美しく見えないし、
隙間が空いたりします。それを回避するためのアルゴリズムに関しては、方正には2人もトップレベルの人材がいて、活躍しています。論文もたくさん書いていますよ。
他にも数学を使うところは世の中にたくさんあって、実は今は数学の天下と言ってもいいくらいです。
企業が子どもたちに会い、「数学ならこういうテーマでみんなに期待している」ということを早い段階で話してあげたい。
彼らには、目的意識をもって高いモチベーションで勉強してもらいたい。

 

小野:数学が好きな学生はいろいろな学部にいますが、実は、企業に行って何かをするより数学の世界だけにとどまっているケースが多いです。
せっかく数学を武器として世の中でいろいろなことができるようになってきているのに、人とコミュニケートして何かするより、
ずっと数学をやっていたいと言う。それは学問ではなく、ただの趣味で、もったいないです。

 

管:若い人は最初は必ず未熟ですから、世の中がそれを許してあげるべきです。若いときに未熟なアイデアを否定されてしまうと、
傷つくだけでなく、将来にも暗い影を落とすことになります。
未熟なものを歓迎する。最高なものは必ず未熟なものから生まれるのだから。
クラウドにしても、最初は使いものにならないと言われながら大きく成功しました。最初から完璧なものが生まれることはない。
そういう精神で、会社も教育の現場も変わっていくべきでしょう。

 

小野:失敗することを恐れている学生、若い人が多い。世の中が失敗に対して寛容じゃないからかもしれません。

 

管:私は、入社した若い人にはいつも言っています。今から3年以内は何をやっても許される時期だからどんどんやってくださいと。
何もわからないんだから、何をやってもいいんだよと。
ただし、どんどん貪欲に吸収して、35歳くらいになったらある程度世の中に通用する人になってほしい。

 

小野:最近はみんなが批判する世の中で、ネットではよく人を叩いたりするが、そうするとやる気が喪失してしまいます。
出ていく人の足を引っ張る仕組み、そういった社会だけは避けたい。失敗してもいいからどんどんやろうよと思います。

 

管:成功するのは偶然で、失敗はある意味必然なので、若い人の失敗にもっと寛容になってほしい。
失敗がないのはちゃんとしたことをやっていないことを意味します。既成のレールを走っているだけでは価値がありません。
イノベーションやレボリューションは、仮説を立てて実行して、気がついたら失敗して、また新しいことをスパイラル的に進め、
そこからの教訓を生かして、チャレンジしていく。その中からしか本当のものは生まれてきません。
パラダイムが変わっているのだから、勇気や若い力が必要です。

 

小野:コロナによって急に社会が変わってしまって、これから教育をどうするんだと、バタバタしています。
早く通常の教育、研究に戻りたいが、それ以上に今回のことをいい意味で転換点と捉えていきたい。

 

管:そんな風に考えている小野先生と連携して、大学に入ってからも勉強を加速するような動きを実現していきたい。
方正では、大学教育の分野において、今北米で比較的導入が増えている、 Möbiusプラットフォームを日本で展開したいと考えています。
Möbiusとはウォータールー大学の教授が作った数学ソフトMapleをクラウド化して、数学の教科書をインタラクティブコンテンツに変えていくようなエンジンを組み込んだもので、コンピューターで数学を教えることが欧米では伸びています。日本や中国でも子どもたちに使えるようにしたい。

 

小野:昔はコンピューターで数式を解くなんて邪道だという風潮がありましたが、
今はコンピューターで数学を正しく証明したり、正しく見せることができることが大事と考えられています。

 

女性の活用と、博士の活用でニューエコノミーに挑戦

管:WiDSはどんな活動をしているんですか?

 

小野先生_02

 

 

小野:WiDS(Women in Data Science)は、スタンフォード大学のICME、コンピューターサイエンスと数理学の大学院を中心とした世界的な活動で、性別に関係なくデータサイエンス分野で活躍する人材の育成を目的としています。
私は、データサイエンティストの活動全般をサポートする役割を担うアンバサダーに2018年に就任しました。
データサイエンスはいたるところでできるんだという話を学生たちはもちろん日本中で伝えていきたいと思っています。

 

管:デジタルエコノミーという言葉を日本ではあまり聞かないが、デジタルエコノミーのシェアは先進度を測る尺度の一つになっています。
IT業界では例えばクラウドサービスの度合いによって、会社の価値が決まります。
日本はトラディショナルな経済が強いから、ニューエコノミーの代表、デジタルエコノミーの重要性をいくら強調しても過言ではないと思います。

 

小野:日本でデジタルトランスフォーメーションが進んでいないのは、意思決定する人がわかっていない。
それがいかに機会損失であるかを全く理解していないからだと思います。

 

管:彼らの不勉強や甘い認識のせいで、国民が大変不便な生活を強いられています。日本は決済が古いし、eコマースも遅れています。

 

小野:WiDSを通じて企業に話をする機会があって、企業の現状を聞いてみると、テレワークが認められないのは、要するに上司が何か喋りたいときに部下のお前は俺の前にいろということらしい。なんてひどいと思ったが、今はその理不尽を改めるいい機会になるといい。

 

管:日本の働き方改革は、時間短縮、残業をなくすことにフォーカスしています。考え方が古いです。
デジタルで効率化することができていません。特に日本はコングロマリット(複合・集合)的な会社が多くて、社会資源を牛耳っています。
事業が多岐にわたるし、人数も多すぎるので、CEOが実際には経営できない。日本独特の問題で、トップになっても管理できない。形だけ寄せ集めて予算が大きくて、そこがイノベーションを妨げている。
もっと専門的で、シンプルな構造で若い経営者が経営できる企業体を推進すべきです。横の広がりで大きくするのではなく。データをたくさん使った高度な経営をするのが今の時代のキーになります。

 

小野先生と対談する管_02

 

小野:これからは日本でも社名だけでなく、何ができるか、何にチャレンジできるかに価値が出てくるでしょう。
そういう意味ではデータサイエンス学部も同じで、何それ、カタカナの学部名なんて潰れるかもしれないからやめなさいという話もあるくらい。
そういうことがないように、中身がいい、面白いということを言い続けたい。

 

管:データサイエンス学部はぜひ、学部の前に「Data is the New Oil」とスローガンを掲げたほうがいい。今のデータはかつての石油だ。
今はデータを作って、小野先生のような先生がタンクからデータを掘り出して、中から財産を見つけ出す時代です。

 

小野:データは新たなオイルだが、もらって嬉しい、自分が手にして嬉しいデータかどうか。
ビッグデータで何でもできるんでしょうとか、AIで何でもできると思っている、わかっていない人が上にいて、
お題が降ってくるという話をよく聞くが、それだけでなく何でも集めればいいわけじゃない。
もしかしたらこんな面白いことできるんじゃないかと思いながら、探りながら集めていかないといけない。

 

管:何でも新しいものが出てくるときは、タイミングが重要です。

 

小野:物事のタイミングはあって、データの時代、DXの時代になっていって、データサイエンスがやっときた。
データは昔からあったが、時代とちょうど今合ってきているので、その次を作れる学生を出していきたい。

 

管:いいタイミングでいい学部ができたと思います。方正の人事には2つの特徴があって、
女性の活用と、博士号取得者の活用です。日本ではちょっと変わっていると思います。

 

小野:自分のころは企業という選択肢はなかったが、データサイエンス部はいろいろな選択肢があると思います。

 

管:方正のAI 研究開発センターは、武漢大学の理学部数学統計学科や情報科学学部計算機学科の複数の研究室の教授や学生と共同研究を行っています。インターンとして学生の受け入れも行っています。
日本は材料とかエンジンとか、伝統的な分野は強いが、ニューエコノミーは弱いので、僕らにはチャンス。
小野先生のような方にぶつけて少しずつアクションにつなげ、コラボレーションしていきたい。

 

小野:今日の話はとても刺激的で勉強になりました。

 

管:こちらこそ本当にありがとうございました。

 

 

 

※本対談は、2020年4月30日に行われた内容です。

 

 

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